ある行為をするのが容易ではないことを表す文型に「〜にくい」と「〜するのが難しい」という文型があります。
例えば、次のような文です。
・この本は読みにくい。
・この本は読むのが難しいです。
どちらも、「読む」という行為が難しいということを表す文ですが、2つの文は同じ全く同じ意味の文とは言えないですよね。
では、どういった違いがあるのでしょうか。
今回はこの2つの違いについて見ていきましょう。
「〜にくい」と「〜のが難しい」の違い
では、違いを比べるために次の2つの例文を見てください。
(1) この魚は骨が多くて(食べにくい / 食べるのが難しい)。
(2) この魚は幻の魚なので、(食べにくい / 食べるのが難しい)。
例文(1)はどうでしょうか。
どちらも使えそうかもしれませんが、会話では「食べにくい」の方がしっくり来るという人の方が多いのではないでしょうか。
では、例文(2)はどうでしょうか。
幻の魚つまり、入手困難な魚ということになりますが、こちらの例文では「食べにくい」はなんだか不自然ですよね。
どうして、不自然なのでしょうか?
では、もう2つ例文を見てみましょう。
(3) この椅子は不安定なので、(座りにくい / 座るのが難しい)。
(4) 電車の中には人がたくさんいるので、椅子に(座りにくい / 座るのが難しい)。
今度はいかがでしょうか。
(3)は先ほどの例文(1)と同様に、なんとなく「座りにくい」の方がしっくり来るという人の方が多いかもしれません。
しかし(4)に関しては 「座りにくい」は何だか不自然ですよね。
さて、先ほど紹介した4つの例文を、以下のように分類してみました。
「〜にくい」が適切? | 「〜するのが難しい」が適切? |
この魚は骨が多くて食べにくい。 | この魚は幻の魚なので食べるのが難しい。 |
この椅子は不安定なので、座りにくい。 | 電車の中には人がたくさんいるので、椅子に座るのが難しい。 |
では、なぜこのように分類されたのでしょうか。
4つの例文の特徴を少し考えてみてください。
違いがわかりましたか?
まず「〜にくい」が適切?のグループですが、「魚の骨が多い」や「椅子が不安定」はそれぞれ、その物自体の特徴や性質を表していますよね。そして、その特徴や性質のせいで、身体的にその行為を行うのが難しいという感じがします。
一方で「〜するのが難しい」が適切?の文ですが、こちらは「幻の魚=入手困難」、「人が多い=空いている椅子がない」のようにその場の状況や色々な背景があって、難しいという感じがします。
「〜にくい」と「〜するのが難しい」の違い
- 〜にくい:その物の特徴や性質により、難しい。
- 〜するのが難しい:状況により、難しい。
では、あと2つ例文を見てみましょう。
(5) これらの漢字を5分で(覚えにくい / 覚えるのは難しい。)
(6) こんだけの料理を3分で全部、(食べにくい / 食べるのは難しい。)
上の2つの文を見てみると、今度はどちらも「〜のが(は)難しい」の方がしっくり来ますよね。
でも、上の2つの文は「状況により難しい」というニュアンスの文でしょうか?
違いますね。
今度はどちらも能力として難しいと言っています。
実は「〜のが難しい」は「状況として難しい」ということを表す以外に「能力や技術として難しい」という場合にも使うことができます。
「〜にくい」と「〜するのが難しい」の違い
その人の能力や技術から判断して難しいと言う場合は「〜するのが難しい」を使う。
まとめ
- 〜にくい:その物の特徴や性質により、難しい。
- 〜のが難しい:状況的に難しい。その人個人の能力・技術から判断して難しい。
今回はたくさんあることを表す文型「〜にくい」、「〜のが難しい」の2つの違いについて紹介しました。
「〜にくい」は初級後半に登場する文型なので、学生から質問があった時にうまく答えられるように準備しておきましょう。