日本語の文型には「目的に向かって何かをすること」を表す文型として「〜ために」と「〜ように」という2つの文型があります。
もう少しわかりやすく、例文を挙げるとすると次のような文です。
(1) 第一志望の大学に合格できるように、毎日勉強しています。
(2) 海外へ行くために、パスポートを取りにいきます。
上の2つの文を見てもらえればわかる通り、どちらも何か目的があって、その目的のためにある行動をしていますよね。
(1)の文では「第一志望の大学に合格すること」が目的で、そのために「毎日勉強する」という行為をし、(2)の文では「海外へ行くこと」が目的で、そのために「パスポートを取りにに行く」という行為をします。
でも、この2つの文型ってどうやって使い分けているのでしょうか?
普段の会話では何気なく使い分けている我々、日本人ですが、日本語を学習している学生にとってはかなり難しい文型なのです。
そこで、今回はこの2つの文型の違いを確認することにしましょう。
「ために」と「ように」の違い
意味の違い
次の例文を見てください。どちらが自然な日本語でしょうか?
(3) 海外へ行けるように、パスポートを取ります。
(4) 海外へ行くために、パスポートを取ります。
(4)は冒頭の例文(2)と同じものですが、特に問題なく自然な日本語ですよね。
(3)はどうでしょうか? 「海外へ行けるようにパスポートを取ります」とはちょっと言わないですよね。中には言う人もいるかもしれませんが、ちょっとしっくりこない人が多いのではないでしょうか。
実は「〜ように」の文型は「第一志望の大学に合格できるように、毎日勉強しています。」の例文のように、目的に向かって、頑張ってする行為を言う時に使います。
例文(3)の「パスポートを取る」という行為は頑張ってすることではないですよね?ですから、この文は不自然な文になってしまいます。
「AようにB」は「Aという目標に向かって頑張ってBをする」という意味。
では、次のような文はどうでしょうか。
(5) 宝くじが当たるように、祈ります。
(6) 宝くじが当たるために、祈ります。
(5)はしっくりくるけど、(6)は不自然な感じがしませんか。
でも、(5)は頑張ってする行為ではないですよね。
実は、「ように」には文によっては「そうなればいいなぁ、というお願いのようなニュアンス」もあります。
一方で、「ために」には強い目的成就の気持ちがあります。
宝くじは祈れば必ず当たるものではないですよね。ですから、「ために」は不自然で、「ように」が使われます。
「〜ために」は強い目的成就の気持ちがある。
「〜ように」は「そうなればいいなぁ」というお願いの気持ちがある。
文の形の違い
意味の違いを理解したところで、次は文の形の違いについて見ていきましょう。
(7) 子供でも食べられるように、少し甘く作っています。
(8) ホワイトボードの時が見えるように、前の席に座ります。
(9) 兄の結婚式に参加するために、実家へ帰ります。
(10) 英語を一から学び直すために、この本を買いました。
(7)、(8)は「ように」を使った文で、(9)、(10)は「ために」を使った文ですが、それぞれの動詞の形はどうでしょうか。
「ように」は「食べられる」といった可能の形の動詞や「見える」といった無意志動詞に接続しています。
ちょっと「無意志動詞」という言葉は聞きなれないかもしれませんが、簡単に説明すると自分の意志でコントロールできない動詞のことを指します。(詳しい説明は今回は避けますが、機会があれば別の記事で解説します。)
一方で「ために」の前はどうでしょうか。「参加する」や「学び直す」といった動詞がありますね。
これらの単語は自分の意志でコントロールできる動詞なので「意志動詞」と呼ばれます。
つまり、「ように」は無意志動詞に、「ために」は意志動詞に接続するといった違いがあります。
「ために」:意志動詞に接続
「ように」:無意志動詞に接続
まとめ
今回は「〜ために」と「〜ように」の違いを紹介しました。
最後に2つの違いを以下にまとめておきます。
- 「ために」は強い目的成就の気持ちがある。
- 「ように」は目標に向かって、頑張って何かをする。文によってはお願いのニュアンスが含まれる。
- 「ために」は意志動詞に接続する。
- 「ように」は無意志動詞に接続する。
日本語を教えてられている先生は2つの違いをきちんと理解しておきましょう。